金属3Dプリンターの造形プロセス可視化|スパッタ・ヒューム・溶融池を確認する技術

3d_printer_溶接_3dプリンター_V01

金属3Dプリンターでは、レーザーや電子ビームによって金属粉末を溶融・凝固させながら造形を行います。造形中には、スパッタ、ヒューム、プルーム、粉末飛散、溶融池周辺の変化など、目視では確認しにくい高速現象が発生します。

これらの現象は、造形条件、粉末材料、レーザー出力、走査速度、ガス条件などによって変化し、内部欠陥や表面品質、造形安定性に影響する場合があります。

本ページでは、金属3Dプリンターの基本的な仕組みと、造形中に発生する現象、さらにShield Viewを用いた造形プロセスの可視化について解説します。

金属3Dプリンターとは

3d_printer_溶接_3dプリンター_V03

金属3Dプリンターとは、金属粉末や金属ワイヤーなどの材料を用いて、3次元形状の金属部品を積層造形する装置です。一般的な樹脂3Dプリンターとは異なり、レーザーや電子ビームなどの高エネルギー熱源を使って金属材料を溶融・凝固させながら、部品を少しずつ積み上げていきます。

金属3Dプリンターは、切削加工や鋳造では製作が難しい複雑形状に対応できるため、航空宇宙、自動車、医療、エネルギー、研究開発など、軽量化・高機能化・少量多品種生産が求められる分野で活用されています。

金属材料を溶融・凝固させて造形する装置

金属3Dプリンターでは、金属粉末を薄く敷き、その上からレーザーや電子ビームを照射して、必要な部分だけを溶融・凝固させます。この工程を1層ずつ繰り返すことで、3次元形状の金属部品を形成します。

従来の切削加工では、材料を削って目的の形状を作ります。一方、金属3Dプリンターでは、材料を積み重ねながら形状を作るため、内部流路、ラティス構造、軽量化形状など、従来工法では加工が難しい形状にも対応しやすい点が特徴です。

金属3Dプリンターで造形できる形状

金属3Dプリンターは、複雑な内部構造を持つ部品や、軽量化を目的とした形状の造形に適しています。たとえば、冷却流路を内部に持つ部品、軽量化のための格子状構造、複数部品を一体化した形状などが挙げられます。

このため、試作品だけでなく、研究開発、機能部品、治具、特殊形状部品などの製造にも利用されています。特に、部品点数の削減、軽量化、形状自由度の向上を目的とした用途で注目されています。

造形中には目に見えにくい現象が発生する

3d_printer_溶接_3dプリンター_V02

金属3Dプリンターでは、レーザーや電子ビームによって金属材料を局所的に溶融するため、造形中にさまざまな高速現象が発生します。

代表的な現象として、スパッタ、ヒューム、プルーム、粉末飛散、溶融池周辺の変化などがあります。これらは、レーザー出力、走査速度、粉末材料、積層条件、シールドガスやチャンバー内の気流条件によって変化します。

完成した部品を検査することで、内部欠陥や表面状態を確認することはできます。しかし、欠陥が発生した原因を検討するには、造形後の結果だけでなく、造形中に何が起きていたのかを把握することが重要です。

造形プロセスを可視化する重要性

造形中のスパッタの飛散方向、ヒュームやプルームの流れ、粉末の巻き上がり、溶融池周辺の変化を可視化することで、条件の違いによる現象の変化を比較しやすくなります。

たとえば、レーザー出力や走査速度を変えたときに、スパッタ量が増えるのか、プルームがどの方向へ流れるのか、粉末がどの範囲に飛散するのかを確認できます。これにより、経験則だけに頼らず、現象を見ながら造形条件の検討や品質改善につなげることができます。

金属3Dプリンターの主な方式

3d_printer_溶接_3dプリンター_3種類_V01

金属3Dプリンターには、材料の供給方法や熱源の違いによって複数の方式があります。代表的な方式として、金属粉末を敷き詰めてレーザーや電子ビームで溶融する粉末床溶融結合法と、金属粉末やワイヤーを供給しながら溶融・堆積させる指向性エネルギー堆積法があります。

方式によって造形できる形状、造形速度、精度、材料の扱いやすさは異なります。また、造形中に発生するスパッタ、ヒューム、プルーム、粉末飛散、溶融池の状態も方式や条件によって変化します。

レーザー粉末床溶融結合法(LPBF / SLM)

レーザー粉末床溶融結合法は、金属粉末を薄く敷き、その粉末層にレーザーを照射して必要な部分だけを溶融・凝固させる方式です。1層ごとに粉末を敷き、レーザー照射を繰り返すことで、3次元形状の金属部品を造形します。

高い形状自由度と比較的高い精度が得られるため、複雑な内部流路、ラティス構造、軽量化形状などの造形に用いられます。一方で、レーザー照射部では溶融池の形成、スパッタの飛散、ヒュームやプルームの発生、粉末の巻き上がりなどが起こります。

これらの現象は、レーザー出力、走査速度、粉末材料、積層条件、チャンバー内のガス流れなどによって変化します。そのため、造形プロセスを可視化することで、条件変更前後の違いや、欠陥につながる可能性のある現象を確認しやすくなります。

電子ビーム粉末床溶融結合法(EBM)

電子ビーム粉末床溶融結合法は、電子ビームを熱源として金属粉末を溶融する方式です。粉末床に材料を敷き、電子ビームで選択的に溶融・凝固させる点はレーザー粉末床溶融結合法と似ていますが、電子ビームを使用するため、一般的に真空環境で造形を行います。

高温環境での造形に適しており、チタン合金などの材料で利用されることがあります。方式の特性上、造形環境や観察条件はレーザー方式とは異なりますが、溶融・凝固の状態、粉末の挙動、造形中の安定性を把握することは重要です。

造形中の現象を確認する場合は、装置構造、観察窓の有無、撮影可能な範囲などを踏まえて、可視化方法を検討する必要があります。

指向性エネルギー堆積法(DED)

指向性エネルギー堆積法は、金属粉末や金属ワイヤーを供給しながら、レーザーや電子ビーム、アークなどの熱源で材料を溶融・堆積させる方式です。既存部品への肉盛り、補修、大型部品の造形などに利用されることがあります。

DEDでは、材料を供給しながら溶融池を形成するため、溶融池の大きさ、材料供給状態、スパッタ、ヒューム、プルームなどの挙動が造形品質に影響する場合があります。特に、粉末供給量、レーザー出力、走査速度、シールドガス条件によって、造形状態が変化します。

造形中の溶融池や周辺現象を可視化することで、条件の違いによる挙動を比較しやすくなり、造形条件の検討や不具合要因の推定に活用できます。

方式によって可視化すべき現象は異なる

金属3Dプリンターの方式が異なると、造形中に注目すべき現象も変わります。粉末床溶融結合法では、レーザー照射部周辺のスパッタ、プルーム、粉末飛散、溶融池周辺の変化が重要になります。DEDでは、溶融池の安定性、材料供給状態、スパッタやヒュームの発生、堆積形状の変化などが確認対象になります。

いずれの方式でも、完成品の検査だけでは、造形中にどのような現象が起きていたのかを把握しにくい場合があります。そのため、造形プロセスを可視化し、条件変更前後の現象の違いを比較することが重要です。

金属3Dプリンターの造形中に発生する現象

3d_printer_溶接_3dプリンター_溶け込みの様子_4パターン_V01

金属3Dプリンターでは、レーザーや電子ビームなどの熱源によって金属材料を局所的に溶融し、凝固させながら造形を進めます。造形は短時間で繰り返されるため、照射部周辺では肉眼では捉えにくい現象が発生します。

特に、金属粉末を用いる方式では、熱源が粉末層に照射された瞬間に、溶融池の形成、スパッタの飛散、ヒュームやプルームの発生、粉末の巻き上がりなどが起こります。これらの現象は、造形条件や材料条件によって変化し、造形の安定性や品質に影響する場合があります。

溶融池の形成

レーザーや電子ビームが金属材料に照射されると、照射部周辺の金属が局所的に溶融し、溶融池が形成されます。溶融池は、造形中の金属が液体状態になっている領域であり、その大きさや形状、安定性は造形品質に関わる重要な要素です。

溶融池が安定していない場合、未溶融、過溶融、形状のばらつきなどにつながる可能性があります。そのため、造形中の溶融池周辺の変化を確認することは、条件検討を行ううえで重要です。

金属3Dプリンターは、航空宇宙産業での燃料ノズルの製造や、特定の航空機向け部品、さらにはジェットエンジンの部品製造にも利用されています。

スパッタの飛散

スパッタとは、溶融した金属や周囲の粉末が、照射部周辺から飛散する現象です。金属3Dプリンターでは、レーザー出力、走査速度、粉末材料、粉末層の状態などによって、スパッタの発生量や飛散方向が変化します。

スパッタが造形面や周辺の粉末層に付着すると、次の層の造形状態に影響する場合があります。特に、条件を変更した際にスパッタの量や飛散範囲がどのように変化するかを確認することは、造形条件の比較に役立ちます。

ヒューム・プルームの発生

造形中には、金属材料が高温で加熱されることで、ヒュームやプルームが発生する場合があります。ヒュームは微細な金属粒子や金属酸化物を含む煙状の現象であり、プルームは照射部周辺から上方へ立ち上がる高温の蒸気やガスの流れとして現れます。

これらの挙動は、レーザー照射部周辺の気流、チャンバー内のガス流れ、材料条件によって変化します。ヒュームやプルームの流れを確認することで、造形中の発生位置や拡散方向、周辺への影響を把握しやすくなります。

粉末飛散・粉末の巻き上がり

金属粉末床を用いる造形では、照射部周辺の急激な加熱や気流の影響によって、周囲の粉末が巻き上がる、または飛散する場合があります。粉末飛散は、造形面の乱れや粉末層の不均一化につながる可能性があります。

粉末の挙動は、粉末粒径、材料特性、レーザー条件、ガス流れなどによって変化します。造形中の粉末飛散を可視化することで、条件変更前後の違いや、粉末層の安定性を確認しやすくなります。

造形中の現象は条件によって変化する

溶融池、スパッタ、ヒューム、プルーム、粉末飛散は、それぞれ独立した現象ではなく、造形条件の変化に応じて相互に関係しながら発生します。たとえば、レーザー出力や走査速度を変更すると、溶融池の状態だけでなく、スパッタの飛散量やプルームの立ち上がり方も変化する場合があります。

そのため、金属3Dプリンターの造形プロセスを評価する際は、完成品だけを見るのではなく、造形中に発生している現象を確認することが重要です。可視化によって、現象の発生位置、流れ方、飛散方向、条件変更前後の違いを把握しやすくなります。

焼結する際の溶融状態を可視化

カトウ光研では、金属粉末をレーザーで焼結する際の溶融状態を可視化する技術を提案しています。金属粉末材料の違いや積層配合による温度状況を可視化、データ化することで、品質保証の管理を定量化できます。

焼結プロセス

金属3Dプリンターの「焼結」とは、粉末状の金属材料を高温に加熱し、その粉末粒子同士を結合させることで一体化した固体部品を形成するプロセスを指します。焼結プロセスでは、金属粉末が部分的に溶融し、隣接する粉末粒子と結合します。結果として、粉末の間の空隙がなくなり、連続した固体の形状が得られます。

焼結プロセスは、部品の密度や機械的特性に大きな影響を与えるため、適切な温度や時間で加熱することが重要です。正確な焼結条件のもとで行われることで、高品質な部品の製造が可能となります。

焼結を可視化するメリット

画像は、可視化用パルスレーザー光源とハイスピードカメラを組み合わせ、完全同期撮影をした映像です。金属3Dプリンター造形時の金属粉体挙動や溶融状態を可視化することができます。

欠陥の原因特定につながる
金属3Dプリンティングにおいて、焼結過程での微小な空洞や孔は部品の品質や強度に影響を及ぼす可能性があります。パルスレーザー光源とハイスピードカメラを使用して焼結部の動作をリアルタイムで観察することで、これらの欠陥の原因を特定し、適切な対策を講じることができます。


焼結プロセスを最適化できる
焼結の過程でのレーザーの動作や金属粉の反応を詳細に観察することで、焼結プロセスの最適化が可能となります。これにより、製造時間の短縮や材料の無駄の削減など、生産効率の向上が期待されます。


不具合を即座に検出できる
ハイスピードカメラを使用して焼結部の動作をリアルタイムで観察することで、不具合や異常が発生した際にこれを即座に検出し、対応することができます。これにより、製品の不良率の低減や再製造の必要性の削減など、全体的な生産コストの削減が期待されます。

ハイスピードカメラ_ラインナップ_V01

関連記事
ハイスピードカメラの選び方|選定のポイントや計測に必要なスペックまとめ
ハイスピードカメラは、高速現象に対してフレーム間の移動量を抑えてより細かく滑らかに観察することができます。一般的なビデオカメラやテレビ放送は、1秒間に30コマ、または60コマで撮影...「ハイスピードカメラの選び方」続きを読む

焼結の温度を画像から計測

焼結では、金属粉とバインダーの組み合わせから成るブラウン部品を、バインダーが蒸発する温度まで加熱し、これによりバインダーが部品から取り除かれます。

その後、炉の温度は材料の融点よりもわずかに低い金属の焼結温度まで上昇し、金属粒子同士が融合します。焼結が完了すると、元の粉末粒子の形跡はほとんど見られなくなり、部品は多孔性の低いものになります

2色法で焼結の温度を画像から計測

2色法による温度計測は、測定対象物に触れることなく温度分布を計測できます。サーモグラフィとは異なり、材質ごとの放射率補正も必要ありません。さらに、カラーハイスピードカメラで撮影することで、高速現象の温度計測も可能です。

2色式温度計測でできること

  • 溶け込み中の金属粉末の温度分布を計測できる
  • 金属粉末の材料組成の違いによる温度分布を計測できる
  • 特定エリアでの温度のばらつきを確認できる
  • レーザー走査速度を変えた際の溶融凝固温度を測定できる

焼結プロセスの温度計測のメリット

品質の一貫性を管理できる
焼結過程での温度変動は、部品の品質に大きな影響を及ぼす可能性があります。温度を正確に計測することで、焼結プロセスの一貫性を保ち、部品の品質向上につながります。


多孔性を管理できる
焼結過程での温度は、温度を正確に監視することで、多孔性の問題を適切に管理できます。多孔性の低い、適切な部品密度を実現します。


焼結プロセスの最適化を検証できる
温度の計測は、焼結プロセスの最適化にも寄与します。エネルギーの消費を削減し、生産効率の向上、コスト削減につながります。


部品の寿命と性能の向上につながる
正確な温度管理は、部品の寿命と性能を向上につながります。焼結過程での温度が、部品の機械的特性や耐久性に影響を及ぼすためです。

ご検討中の実験対象や現象に合わせて、
可視化・解析方法をご提案します

金属3Dプリンターでは、造形中にスパッタ、ヒューム、プルーム、
粉末飛散、溶融池周辺の変化など、目視では確認しにくい高速現象が発生します。
これらの現象を映像で確認することで、レーザー出力、走査速度、粉末材料、
ガス条件などを変えたときの違いや、造形不良につながる要因を把握しやすくなります。

「造形中のスパッタやヒュームを見たい」
「粉末飛散や溶融池周辺の変化を確認したい」
「条件を変えたときの現象を比較したい」など、
確認したい内容が明確に固まっていない段階でもご相談いただけます。
まずは技術相談、またはカタログダウンロードからお気軽にご利用ください。

お問い合わせ・技術相談をする →
溶接プロセス可視化システムのカタログをダウンロードする →

関連製品

ガラス脈理検査_本体_V01
ガラス脈理検査装置FG series

ガラスの脈理を見える化

ShieldView_本体_V01
溶接プロセス可視化Shield View

溶接中のガスを見える化

シュリーレン_本体_ラインナップ_V01
システムシュリーレンSS series

ガス・衝撃波・超音波を見える化

ハイスピードカメラ_ラインナップ_V01
ハイスピードカメラ

ハイスピードカメラ製品ラインナップ

2D2C_一式_V01
PIVシステム2D2C

2次元2成分PIVシステム

製品デモ、お見積り、導入後のサポートについてご案内します。

可視化や画像解析に役立つ計算を行います。

製品のサンプル動画と可視化事例をご紹介しています。

会社ロゴ
会社ロゴ
お問い合せ・技術相談
Tel.0463-91-1281
受付時間 9:00~18:00(土日祝日を除く)

Copyright (C) カトウ光研株式会社 All Rights Reserved.