流れの可視化とは

流れの可視化とは?

レーザーシートによる流れの可視化画像

レーザーシートによる気流の可視化  ※撮影協力:東京理科大学 石川 仁 先生  青野 光 先生

流れの可視化は、流体の動きや特性を視覚的に捉えるための技術や手法を総称したものです。流体の動きを直接目で確認することは難しいため、この技術は流体の挙動を理解し、それを基にした設計や解析を行う上での基盤となっています。特に、複雑な流れの特性や挙動を詳細に捉えるためには、実験的手法の適用が不可欠であり、多くの研究者やエンジニアがこの技術を活用しています。

定義と目的

流れの可視化は、文字通り流体の流れを「可視化」することを目的としています。具体的には、流れの特性や特徴、乱れや渦、境界層の動きなどを明確に示すことで、流体の動きを理解しやすくすることが目的です。この技術は、流体の動きを直接観察することが難しい場合や、微細な動きを詳細に捉えたい場合に特に有効です。

流れの可視化の主な目的は以下の通りです:

  1. 流れの特性や挙動の理解
  2. 理論と実験の比較・検証
  3. 新しい現象や挙動の発見
  4. 設計や最適化のための情報提供

流れの可視化を行う際、目的に応じて最適な可視化手法を選択する必要があります。そして、実験条件や境界条件を正確に設定して、再現性を確保することが重要です。また、複数の手法を組み合わせることで、より詳細な情報を得ることができます。

ウォータードロップの画像_気体・液体の流れ

気体・液体の流れ【目的・用途別の可視化技術】

「気体や液体の流れを可視化する」とは、流体を見える化してカメラや目視で観察できるようにすることです。通常は目に見えない現象を可視化することで、シミュレーションでしか評価ができない観測対象を...「気体・液体の流れ」詳細ページ

流れの可視化の歴史的背景

先駆者たちの業績

流れの可視化の研究者:ダニエル・ベルヌーイの画像

ダニエル・ベルヌーイ
[Daniel Bernoulli  (1700-1782)]
"Portrait of Daniel Bernoulli (circa 1750)" by Unknown Photographer - 出典: ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)- ライセンス: Creative Commons Public Domain Mark 1.0

流れの可視化の研究者:レオナルド・ダヴィンチの画像

レオナルド・ダ・ヴィンチ
[Leonardo da Vinci  (1452–1519)]
"Presumed Self-portrait of Leonardo da Vinci (circa 1512)" by Leonardo da Vinci - 出典: ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons) - ライセンス: Creative Commons Public Domain Mark 1.0

古代の時代、船舶の設計や水利施設の建設において、水や風の流れを理解することは極めて重要でした。そのため、流れの動きや特性を視覚的に捉える技術が求められ、流れの可視化の基盤が形成されました。流れの可視化は、流れのパターンを明確にするための技術であり、多くの流体(空気、水など)は透明であるため、その流れのパターンは裸眼では見えないのが一般的です。この課題を解決するため、古代の技術者や研究者はさまざまな実験的手法を用いて流れを視覚化しました。

18世紀、ダニエル・ベルヌーイとレオナルド・ダ・ヴィンチは流体の動きを研究しました。特にダ・ヴィンチは、水の流れや渦の動きを詳細にスケッチしました。彼の観察は後の研究者たちに影響を与えました。

19世紀の革新

流れの可視化の研究者:オズボーン・レイノルズの画像

オズボーン・レイノルズ
[Osborne Reynolds  (1842-1912)]

"Presumed Portrait of Osborne Reynolds (1904)" by John Collier - 出典: ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons) - ライセンス: Creative Commons Public Domain Mark 1.0

流れの可視化実験で使用するレイノルズ数の定義式

レイノルズ数の定義式

19世紀にオズボーン・レイノルズが登場しました。彼の研究は、後の流体力学の発展に大きく寄与します。レイノルズは煙や染料を用いて流れの実験を行い、流れの乱れやその特性を深く探求しました。特に、乱れを数値的に評価する「レイノルズ数」は、流れの乱れや遷移を理解する上での基本的な指標として、現代の流体力学研究で広く活用されています。

20世紀の発展

流れの可視化の研究者:セオドア・フォン・カルマンの画像

セオドア・フォン・カルマン
[Theodore von Kármán  (1881-1963)]
"Portrait of Theodore von Kármán" - 出典: ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons) - 画像提供: NASA

流れの可視化の研究者:ルートヴィヒ・プラントルの画像

ルートヴィヒ・プラントル
[Ludwig Prandtl  (1875-1953)]

"Portraitaufnahme von Ludwig Prandtl (1937)" - 出典: ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons) - ライセンス: DLR, CC-BY 3.0

20世紀は、流体力学の研究において多くの重要な発見と進展が見られた時代でした。この中でも、セオドア・フォン・カルマンとルートヴィヒ・プラントルの業績は特筆すべきものとして挙げられます。セオドア・フォン・カルマンは、流れの中の乱れや渦の動きに関する研究を行い、その結果をもとに新しい可視化技術の開発に取り組みました。彼の研究は、流体の動きや挙動をより詳細に観察し、理解するための基盤を築きました。

一方、ルートヴィヒ・プラントルは、境界層の理論を確立しました。境界層は、物体の表面近くの流れの層を指し、この理論は流れの挙動や特性を詳細に解析する上で非常に重要なものとなりました。プラントルの境界層理論は、流れの可視化技術の発展において、大きな一歩となったのです。

カルマン渦

カルマン渦のシミュレーション画像

カルマン渦は、流れる流体が障害物にぶつかった際に、その後方で定期的に発生する渦の列を指します。この現象は、流体の安定性や乱れの特性を理解する上で非常に重要であり、多くの工学的応用において考慮される要因となっています。特に、航空機の翼や橋の柱など、流体と相互作用する多くの構造物の設計や評価において、カルマン渦の影響は深く研究されています。
※画像はシミュレーションでカルマン渦を再現してPIV計測を行った事例です。
こちらでも解説しています。

現代の技術

現代の流れの可視化の研究分野_航空機
現代の流れの可視化の研究分野_医療

近代に入ると、科学技術の発展に伴い、流れの可視化の手法も大きく進化しました。物理学や数学の進歩により、流れのメカニズムをより深く、かつ定量的に理解する研究が進められるようになりました。特に、計算機の発展と数値流体力学(CFD)の進歩により、流れのシミュレーションや解析が可能となり、実験だけでなく計算による流れの可視化も一般的になります。このような背景のもと、流れの可視化は航空機の設計から気象予報、医療分野まで、幅広い領域での応用が拡大しています。

参考文献
Kemp, M. (2004). Leonardo da Vinci: The Marvellous Works of Nature and Man. Oxford University Press. 
Reynolds, O. (1883). An experimental investigation of the circumstances which determine whether the motion of water shall be direct or sinuous, and of the law of resistance in parallel channels. Philosophical Transactions of the Royal Society of London, 174, 935-982. 
Anderson, J. D. (1995). A History of Aerodynamics: And Its Impact on Flying Machines. Cambridge University Press. 
Yamamoto, K. (2002). Advances in Computational Fluid Dynamics and its Applications. Fluid Dynamics Research, 28(3), 165-180. 

流れの可視化:実験的アプローチ

流れの可視化における実験的手法は、流れの特性や挙動を直接的に観察し、理解を深めるための基本的なアプローチとして長らく用いられてきました。以下では、各実験的手法について、より詳細に解説いたします。

表面流れの観察

表面流れの観察は、流れの特性や挙動を直接的に観察するための基本的な手法として用いられています。特に、船舶や航空機の模型の表面に特定の液体や粉末を塗布することで、流れのパターンや挙動を視覚的に捉えることができます。具体的な実験手法としては、模型の表面に特定の油を塗布し、流れの影響で油が移動する様子を観察します。油は燐片状の粒子(アルミ粉やグラファイト粉など)を含んでおり、光を反射して流れの方向や速度を示します。

また別のアプローチとして、特定の塗料を模型の表面に塗布して観察する方法もあります。流れの影響で塗料が剥がれる様子を観察することで、流れの特性を詳細に捉えることができます。塗料は乾燥後に剥離しやすいものを選びます。流れの影響で塗料が剥がれる場所や程度から、流れのせん断応力や乱れ度を推定することができます。

トレーサー粒子の活用

トレーサー粒子を使用した可視化手法は、流れの動きや特性を明らかにするための実験的手法の一つです。この方法では、流体中に微小な粒子を導入し、その動きを追跡することで、流れの動きや特性を視覚的に捉えることができます。具体的な実験手法としては、Particle Image Velocimetry(PIV)やLaser Doppler Velocimetry (LDV)があります。

PIVでは流体中に微小な粒子を懸濁し、レーザーシートを用いて粒子の動きを撮影することで、流れの速度や方向を計測します。一方、LDVでは、レーザー光を用いて流体中の粒子の速度を直接計測することができます。

カルマン渦の渦度を計測_PIVとは

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光学的手法の適用

流れの中での温度や密度の変動は、光の屈折率への影響を及ぼします。この性質を利用し、シャドウグラフ法やシュリーレン法といった光学的アプローチを適用することで、これらの変動を明確に捉えることが可能となります。特筆すべきは、高速な流れやショック波の検出において、これらの光学的手法が極めて効果的である点です。

ろうそくの熱流体を可視化_シュリーレン法とは

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流れの可視化事例

空気の流れの可視化【野球・ゴルフ・バドミントン】

野球のボール、ゴルフボール、バドミントンのシャトルをハイスピードカメラで撮影しました。スーパースロー映像で通常では「はっきりわからない空気の流れ」の可視化動画です。さらに「PIV」という手法でボールやシャトル周りの空気の流れを分析しました。
【ボールの回転で起きる空気の流れを可視化】
野球の4シーム、ゴルフボールのディンプルのまわり、シャトル後方の流れをそれぞれスーパースロー映像で撮影しています。
【空気の流れをPIVで解析】
PIVは「粒子画像流速測定法」のことで流れの分析でよく使われる手法です。映像から測ることができるので、回転や形状の違いで起きている”空気の流れ”を科学的に分析することができます。

PIV×風洞実験:5つの事例

本動画では、PIV(Particle Image Velocimetry)を用いた風洞実験での事例を紹介します。PIVは流体の速度ベクトルを算出し、速度場を視覚化する強力なツールです。特に風洞実験において、気流の複雑な挙動を理解しやすくします。

動画内で紹介している風洞実験

  1. 円柱後方の気流
  2. 車体モデル:リアウィング周りの気流
  3. 野球のボール:4シーム回転時の気流
  4. ゴルフボール(ディンプル)後方の気流
  5. 雪氷風洞での雪の挙動を計測
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