「コンタミ」とは、「コンタミネーション(Contamination)」の略で、科学や産業の分野において「汚染」や「混入」を指す言葉です。特に、対象物に不純物や異物が混入することで、その品質や性能が損なわれる現象を指します。この用語は、微生物学、材料科学、製造業など、さまざまな分野で使用されます。
製造現場においては、製品や製造環境に意図しない異物が混入してしまうことを指します。目に見えないほど小さな微粒子が、製品の品質や製造プロセスに大きな影響を与えることがあります。
製造現場で発生する微粒子は、その種類や大きさ、形状が様々です。
【種類】:金属、樹脂、繊維、紙、皮脂、髪の毛など
【大きさ】:数ナノメートル ~ 数ミリメートルまで
【形状】:球形、不規則など様々
これらの微粒子は、機械加工、研磨、切断などの工程で発生したり、人から剥がれ落ちたり、空気中を浮遊して製品に付着したりします。
コンタミ(微粒子の混入)は、さまざまな産業や研究分野において深刻な問題を引き起こす要因です。特に、微細加工、半導体製造、医薬品開発などの高精度な作業では、微粒子の混入が製品やプロセスに重大な影響を与えることがあります。
半導体製造:
半導体製造は、極めて高い精度とクリーンな環境が求められる分野です。その中で、微粒子によるコンタミは、製品の品質や歩留まりに深刻な影響を及ぼす主要なリスク要因の一つです。微粒子が製造プロセスに混入することで、製品性能の低下や生産効率の悪化を招く可能性があります。
光学機器:
光学機器は、高精度な光学設計と半導体製造と同様、清浄な環境が求められる分野です。微粒子が光学部品やシステムに付着することで、視認性や光学特性が損なわれ、最終的な製品の品質低下につながる可能性があります。
医薬品:
医薬品の製造・使用において、微粒子によるコンタミは重大な安全性リスクをもたらします。医薬品は人の健康や命に直接関わるため、微粒子の混入による汚染を防ぐことが極めて重要です。微粒子が医薬品に混入した場合、製品の品質だけでなく、患者の安全にも深刻な影響を与える可能性があります。
食品:
食品の製造・加工・流通において、微粒子によるコンタミは消費者の健康や安全にリスクをもたらします。微粒子の混入は、食品の品質や安全基準を損ない、場合によっては法律違反や製品回収(リコール)につながることがあります。
微粒子によるコンタミ(汚染・混入)は、製造現場においてさまざまな問題を引き起こし、生産効率を低下させるとともに、コストの増加を招く要因となります。
不良品の増加によるコストの上昇:
微粒子が製造プロセス中に混入すると、製品の品質が劣化し、不良品の発生が増加します。不良品の修正や廃棄には追加のコストがかかり、資材や労力が無駄になるだけでなく、全体の生産効率が低下します。
メンテナンスコストの増加:
微粒子が製造設備の内部に蓄積すると、機器の劣化や故障を引き起こします。この結果、メンテナンスや交換費用が発生し、長期的な生産効率にも悪影響を及ぼします。
製造現場において、製品の品質を確保するために微粒子によるコンタミの対策は不可欠です。以下に、一般的なコンタミ対策をご紹介します。
クリーンルームの導入:
半導体や医薬品製造などの分野では、空気中の粒子を管理するためにクリーンルームが使用されます。特に、HEPAフィルターやULPAフィルターを使用した空調システムは、空気中の微粒子を効率的に除去します。
空調管理:
適切な温度、湿度、気流を維持し、微粒子の発生や拡散を抑えます。
防護服・クリーンウェアの着用:
クリーンウェア、ヘアキャップ、マスク、手袋などを着用し、衣服や皮膚から発生する微粒子を抑えます。
手洗い・衛生管理の徹底:
作業前後の手洗いや消毒を義務付けることで、微粒子の付着を最小限に抑えます。
静電気対策:
静電気は微粒子を引き寄せる原因となるため、静電気防止装置や導電性マットを活用します。
定期的な清掃:
機器やツールを使用する前後に清掃を行い、汚れや粒子の蓄積を防ぎます。
気流の制御:
気流設計を最適化し、微粒子が発生源から拡散しないようにします。
非接触な技術:
機械やロボットを使用して、作業者の接触を最小限に抑えます。
種類 | 概要 | 例 |
物理的なコンタミ | 異物や微粒子が対象物に付着・混入するもの | 製造過程での金属片や粉塵の混入、微粒子による表面の汚染 |
化学的なコンタミ | 化学物質や溶剤が対象物に混入するもの | 製薬工程での異なる成分の混合、不適切な洗浄による化学物資の残留 |
生物学的なコンタミ | 微生物や生物由来の物質が対象物に付着・混入するもの | 食品や医薬品に細菌やカビが混入するケース |
クロスコンタミ | 別製品や工程間での汚染・混入 | 製造ラインで異なる製品の原料が混ざる、医療機器での交差感染 |
環境的なコンタミ | 作業環境や空気中の微粒子が影響を及ぼすもの | 工場やクリーンルーム内の空気中のホコリや粒子が製品に付着する |
カトウ光研では、微粒子を可視化(微粒子可視化システムPV2 series)する技術を提案しています。コンタミとなる微粒子を直接見える化することで、発生源や拡散状況を正確に把握し、適切な対策を講じることができます。
クリーンスーツからの発塵を可視化
製品付着した微粒子を可視化
手袋から発塵した浮遊する微粒子
微粒子可視化技術を用いることで、作業環境や製造プロセス内の微粒子の発生源を正確に特定できます。例えば、特定の機器や材料から発生する粒子を検出することで、原因の除去や適切な管理を行うことが可能です。
浮遊する微粒子の動きを可視化することで、クリーンルームや作業環境内における粒子の拡散状況を把握することができます。
微粒子の可視化データを用いて、作業者に汚染リスクを具体的に説明することができます。これにより、作業者の意識向上や適切な行動の促進が期待できます。
リスクの早期発見と迅速な対応:
発生源を迅速に特定し、対策を講じることで品質トラブルを未然に防止します。
コスト削減:
コンタミによる不良品やライン停止の発生を抑えることで、全体的なコストを削減します。
信頼性の向上:
製品の品質や安全性が向上し、顧客や市場からの信頼性が向上します。
コスト削減:
汚染防止対策の精度が向上し、不必要な対策や再作業を削減できます。
クリーンルームで使用する手袋からの発塵を可視化しています。「微粒子可視化システム」を使用して微小な粒子を高感度に見える化します。動画ではクリーンルームで使用する手袋と一般的なニトリル手袋を比較。またクリーンルーム内の作業で起こる汚染について紹介しています。
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「コンタミネーション(Contamination)」とは、日本語で「汚染」や「混入」を
意味する言葉です。科学、医療、製造業など、さまざまな分野で使われ、
対象物に不純物や異物が付着・混入する現象を指します。
コンタミネーションは、製品の品質、安全性、生産効率に悪影響を与えるため、
その防止が重要視されています。特に高い精度が求められる分野では、
微粒子や異物の管理が必須です。
製造業におけるコンタミ(Contamination)とは、製造プロセス中に異物や不純物が製品や
設備に混入する現象を指します。このような混入は、製品の品質や性能、
安全性に大きな影響を与えるため、製造業全般において重要な課題とされています。
例:
・半導体製造での微粒子の付着、食品製造ラインでの異物混入。
・製薬工程で異なる成分が混ざる、洗浄不足で薬剤が残留する。
・食品加工時の細菌混入、医薬品製造時の無菌環境の汚染。
コンタミ(Contamination)の原因は、多岐にわたりますが、大きく分けて「環境」、
「作業者」、「機器・ツール」、「プロセス」の4つに分類されます。
それぞれの原因を理解し対策を講じることで、異物混入を防ぎ、
製品やプロセスの品質を保つことが可能です。
環境由来の原因
・空気中の微粒子
・温度や湿度の変化
・汚れた作業エリア
作業者由来の原因
・衣服や皮膚からの微粒子
・不適切な行動
機器・ツール由来の原因
・機器の摩耗や劣化
・清掃、メンテナンス不足
・静電気の発生
プロセス由来の原因
・不適切な工程設計
・交差汚染(クロスコンタミ)
・不適切な素材の使用
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